『うんこドリル』×NITE異色のコラボ裏話 前編 ~うんこを通じてくらしのキケンをベンキョウ~
2017年の発売と同時に日本中の小学生を笑いの渦に、保護者を困惑の渦に巻き込んだ学習ドリル『うんこドリル』をご存じでしょうか。漢字問題の例文のすべてに「うんこ」が使われている、という異色の学習ドリルで、今や全小学生が知っているのではというほどの人気ドリルなんです。
このたび、そんな『うんこドリル』と独立行政法人 製品評価技術基盤機構がまさかのコラボ!
“うんこ”を通じて「くらしの中の危険」を学ぶ!?オンラインゲーム「くらしの安全ドリル(せいひん事故編)」を発表しました。
↑のリンクの「ゲームスタート」から、どなたでも無料でプレイできます。
今回は「うんこドリル くらしの安全 せいひん事故編」の開発から発表までの“裏うんこ話”を、『うんこドリル』を発売している文響社で「うんこアンバサダー」をつとめる石川文枝さんと独立行政法人 製品評価技術基盤機構(NITE(ナイト))企画管理部広報・イノベーション支援課広報室主任の田邊が語ります。
『NITE×うんこドリル 』ができるまで
――今回のコラボはどちらから持ちかけたのですか?
石川さん:
文響社からです。私が所属する「うんこ事業部」では、学習参考書以外の領域で『うんこドリル』のコンテンツや「うんこ先生」というキャラクターを広げていく事業を行なっています。
※石川さんもnoteでうんこドリルについて熱く語っています。↓
生きる上でとても大切な学びをお子様に届けるというミッションを持っており、これまでも法人や、自治体、省庁とコラボをしてオリジナル冊子やゲーム、ウェブ制作を行ってきました。最近ですと、防犯、防災や、交通安全、SDGsといったテーマを扱っています。
今回、NITEさんにコラボを持ちかけたのは、2020年の夏ごろに、SNS上で「小さな子がブドウをのどに詰まらせる事故があるけれど、なかなかそれが広まらない」という投稿が話題になっていたことに始まります。私も小さい頃、アメを喉に詰まらせて死にかけたことがありまして、そういったジャンルで『うんこドリル』が作成できないかと調べた結果、NITEさんにたどり着きました。
田邊:
NITEの製品安全センターでは、くらしの中で起こる事故、例えばコンセント周りのホコリによる発火やミニ扇風機のバッテリーの発火といった製品事故の再現映像を作製し、それらを発信することで、事故の未然防止につなげたいと考えています。我々の事故再現動画は、テレビニュースなどでたびたび取り上げられています。
しかし、こういった取り組みにもかかわらず、爆発や発火といった日常生活で発生する事故は、年間1,000件以上がNITEに報告されています。身の回りの製品の正しい使い方を知ることで防ぐことができる事故も多いため、くらしの中で起こる事故を防ぐために、NITEの活動をもっと知っていただきたいと考えていました。
また、未就学児のようにお子さん自身で事故を防ぐことが困難な層に、情報を伝える方法を模索していた時期でもありました。お子さんと保護者の両方に訴求したいという思いがあったところ、今回のお話をいただきました。
石川さん:
『うんこドリル』の問題文はおもしろいので、お子さんが読み上げることがすごく多いんです。その結果、教材の中身が、家庭にいる大人にも自然と伝わってしまう現象が起こるので、今回初めて保護者の方を含めたターゲット設定をしました。
文響社が持つ「うんこ学園」の中のコンテンツのひとつの「くらしの安全」として、20問の問題から、ランダムに10問が表示され、正解するとごほうびのがもらえるというゲーム形式になっています。
――NITEが手がける幅広い業務の中から、いくつかテーマを抜き出して問題を作るのは、大変だったのではないでしょうか。
田邊:
そうですね。今回は、事故情報や防止策に詳しい製品安全広報課と組んで、NITEが保有している事故情報から問題を作りました。問題のレベルは小学校中学年が解けるような内容で設定していますがリード文や問題のすべてにふりがなを振っており、漢字が読めないお子さまにもご理解いただけるようにこだわりました。
そもそも製品事故といった内容はお子さまにとって関心が低く、興味を持てない内容だと思いました。そこで、ドリルの問題は、「お子さまからの注目を集める」 >「興味、関心を持って学んでもらう」>「行動してもらう」といった行動モデルで考えました。
「お子さまからの注目を集める」については、「爆発」や「発火」といったお子さまの関心を引きそうな内容を盛り込みました。
「興味、関心を持って学んでもらう」については、普段の生活の中で起こる事故を多く取り上げることで、身近なシチュエーションにも危険が潜んでいるということ(他人事ではない)を認知して頂くことで興味を引きたいと考えました。
「行動してもらう」については、”お子さま自身がまわりの家族を事故から守るための行動をとって、ヒーロー/ヒロインになろう”といったメッセージを込めました。
これは、”子どもは「○○してはいけない」と言われると反発してしまう。「○○しようね!まわりに教えてあげようね!」といった表現の方が子どもに伝わりやすい”、という子どもを持つ私の同僚から聞いた話を参考にしました。
さらに、子どもだけではなく、大人もやってしまいそうな事故を入れ、3世代で楽しんでもらう工夫を加えました。
今回はお子さんやお子さんを持つ大人から圧倒的な人気と認知度を誇る『うんこドリル』さんとのコラボです。問題選定ではいろいろ考えたのですが、文響社さんの『うんこ先生』というキャラクターやかわいいイラストに期待し、不安はありませんでした。
――イラストは社内で描かれているんですか?
石川さん:
当社は出版社としては珍しく、デザイン部に20名も在籍しています。イラストも社内で作っており、より良い作品を作っていける組織になっています。
うんこで伝えるむずかしさ
――問題制作で苦労したことはありましたか?
田邊:
正直、初期に作ってもらったラフは「うんこが漏れそうだから慌てて電池を飲み込んでしまった。どうなる?」とかシチュエーションの意味が分からないものもあって(笑)。どう伝えたら、電池を飲み込むと危ないということがお子さまに伝わるのだろうと頭を悩ませましたね。
石川さん:
弊社に製品安全に関する知見が全くなかったので、ラフの情報量がかなり少なくて……。内容的にはNITEさん頼りでして、勉強させていただきながら作っていきました。
田邊:
もっとこうしたいという気持ちと、それをやるには文響社さんに絵を変えてもらわなきゃっという話になるので、あまり無理なことは言えないし……っていうのがあり。でも、安全にかかわる部分なので率直に言わせてもらい、毎日のように連絡をして、だいぶ直していただきましたね。
石川さん:
ありがとうございました! 最初は大枠からご確認いただきたいなと思って、詳細を詰めずにドンっとNITEさんにお渡ししてしまったので、かなり議論を重ねさせていただきました。
田邊:
例えば、電池の問題は「ボタン電池のイラストや写真だけ載せる?」というところから、赤ちゃんがハイハイしている前にボタン電池があるイラストになって、「え、そもそも、こんなところにボタン電池がある状態を作らないよね」という話にもなり。
そこから、「赤ちゃんがボタン電池を舐めそうになっていて、お兄ちゃんがハッとしている」というシチュエーションのイラストになり、うんこは体の中にあるということにしました。
――石川さんとしては、他のコラボドリルと比べて、やり取りが多かったというのはありますか?
石川さん:
ここだけの話、やりとりの数は一番多いかもしれませんね(笑)。でも、当社としては密にやりとりしていただいた方がいい作品になるという感覚なので、大変ありがたかったです。お互いパートナーみたいな感じでフラットにご対応いただきました。
◇ ◇ ◇
今回はここまでです。
ボタン電池の問題、実際に見てみたくなりますね。20問からランダムに10問が表示されるそうですから、毎回新しい問題に出会えるかもしれません。ぜひ、みなさんもチャレンジしてみてください。
パソコンでも、スマホでも楽しめます。
後編では各問題に込められた苦労や想いに迫ります!