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電気保安のスマート化 -課題解決の切り札はデジタル技術-

電気保安現場の課題

 皆さんが毎日電気を安心して使用できるように、電力会社等の事業者は定期的な点検や検査(電気保安)を日々実施しています。このような事業者の努力にもかかわらず、発電設備等の老朽化や電気保安に携わる人材不足などにより、電力供給が不安定となってしまうことがあります。

 現状、電気保安の現場では、異常の兆候を人が監視しております。緊急時には呼び出しがある等、職務環境が不規則なため、若い人材が集まらなくなっています。また、感電といったリスクに対処しながら保守点検をおこなうためには高い専門知識も必要であり、人材育成には時間を要します。

 これらの課題解決に向け、電気保安のスマート化が求められています。

 スマート保安とは、安全性・経済性を考慮しつつIoTやAIといった最先端のデジタル技術を導入し、電気保安の生産性、効率性、安全性の向上を図っていく取り組みのことです。

 ※スマート保安:
①国民と産業の安全の確保を第一として、②急速に進む技術革新やデジタル化、少子高齢化・人口減少など経済社会構造の変化を的確に捉えながら、③産業保安規制の適切な実施と産業の振興・競争力強化の観点に立って、④官・民が行う、産業保安に関する主体的・挑戦的な取組のこと。

具体的には、①十分な情報やデータによる科学的根拠とそれに基づく中立・公正な判断を行うことを旨として、②IoT やAI など安全性と効率性を高める新技術の導入、現場における創意工夫と作業の円滑化などにより産業保安における安全性と効率性を常に追求し、③事業・現場における自主保安力の強化と生産性の向上を持続的に推進するとともに、④規制・制度を不断に見直すことによって、将来にわたって国民の安全・安心を創り出すこと。
出典:スマート保安推進のための基本方針(スマート保安官民協議会資料


 現在、スマート保安に資するものとして開発・導入が期待される主な技術分野は、
①ロボット・ドローン
②センサー・カメラ
③定期・常時伝送
④異常検知・予兆検知・CBM(Condition Based Maintenance)
⑤ウェアラブル機器・携帯端末
等が想定されています。


スマート保安の具体的取組

 スマート保安という言葉は、電気保安の業界でもまだあまり浸透していません。そこで、今回はロボットやドローンを用いた発電所設備の点検自動化に関するスマート保安技術の活用事例や普及・促進の取組みについて紹介します。 

ロボット・ドローンを用いた火力発電所の点検

 火力発電所の正常な稼働を維持するには、運転員の定期的なパトロールが欠かせません。点検には多くの労力と時間を要します。また、高齢化などによる担い手不足から、五感や点検ノウハウなどの巡視点検に必要な技術を、いかに継承していくかが課題となっています。こうした課題を解決するために、ロボットやドローンによる点検の自動化技術の開発が進められています。
 
 ロボット・ドローンを用いた火力発電所の点検の事例では、従来は人が出向いて目視などで確認していた設備情報を、ロボットやドローンを用いて収集します。収集するデータは音や振動、カメラや熱画像等があります。
 
 あらかじめ入力した点検路を自動で点検するようになっており、取得したデータはAIを用いて分析することで設備の運転状況が正常かどうか診断をします。このAIによる異常検知や原因の推定に活用することを目指した開発が行われています。


メンテナンス及びオペレーションの作業プロセス
出典:電力安全部会 「電気保安分野 スマート保安アクションプラン」
資料提供:関西電力株式会社


スマート保安技術の普及・促進に向けた取組み    「スマート保安プロモーション委員会」

 スマート保安技術やデータを活用した保安技術についての妥当性を確認・共有する場として、製品評価技術基盤機構(NITE)が2021年10月に立ち上げたのが、スマート保安プロモーション委員会です。
 
 スマート保安プロモーション委員会では、学識経験者等からなる委員が、申請のあった技術案件の妥当性を評価します。評価の結果、スマート保安技術として妥当と判断されれば、技術カタログに登録され、NITEのHP上で公表されます。また、スマート保安技術の普及を阻害している障害があれば、対応策を検討し国や業界団体への提言を目指します。

  スマート保安プロモーション委員会のイメージ
出典: 電気保安制度WG 「電力安全分野におけるスマート保安の推進について」


プロモーション委員会で取扱う評価範囲とスマート保安技術カタログ
出典︓電気保安制度WG 「スマート保安プロモーション委員会について」

 
 現在、NITEではスマート保安技術についてのご相談を受け付けています。例えば、ベンチャー企業等でセンサーやAIの技術はあるが、実際の設備を持っていないためスマート保安の開発が進まないという場合もあります。そういった場合に、プロモーション委員会で審議をし、電気設備に実際に使用できる可能性のある技術(基礎要素技術)であるという評価を受ければ、当該技術を技術カタログへ掲載し広く一般に公開することができるため、導入する設備を探す際に役立てることができます。
 スマート保安技術について困っている事があれば、是非NITEへご相談ください。

電気保安技術支援業務・スマート保安 | 国際評価技術 | 製品評価技術基盤機構 (nite.go.jp)