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「蓄電池を水没させて、再エネの安全を支援している」という話

こんにちは。
独立行政法人製品評価技術基盤機構 NITE(ナイト) 広報企画室です。

「再生可能エネルギー」(再エネ)、「循環型エネルギー」と聞いて、まず太陽光発電や風力発電を思い浮かべる方は多いのではないでしょうか。太陽光パネルや巨大な風車が並ぶ風景も、ずいぶん目にするようになり、「脱炭素」とか「カーボンニュートラル」という言葉も頻繁に聞くようになりました。電気はなくてはならないけれど、将来の地球のために、太陽光、風力、地熱など、環境に負荷のかからない方法で作りたいですよね。

そこでNITEでは、再エネの普及のために、あえて蓄電池を水没させています。

「蓄電池を水没? 何の話?」と思われたかもしれませんね。では順を追って説明しますね。


「お天気次第」「風まかせ」だから、ないと困るもの

蓄電池は、何のために必要なのでしょう。

再エネの象徴的な存在である太陽光発電や風力発電は、(少々乱暴に言えば)「お天気次第」「風まかせ」の仕組み。発電量が少ない日もあれば、発電した電気が余る日もあります。残念ながら「必要なときに、必要なだけ発電する」ということはできません。

この問題を解決するには、余った電気は蓄えておいて、足りない時に使えるしかけ(=システム)、つまり大型の「蓄電池システム」が必要なのです。再エネの普及は、蓄電池システムの普及なしには語れないといってもいいかもしれません。


蓄電池システムの安全のための国際規格と国内規格ができた!

蓄電池システムが普及していく中で、気になることの一つは、「安全性」でしょう。安全性の枠組み作りは、世界各地で進んでいます。

2020年4月、大型蓄電池システムの安全性について、初めての国際規格ができました。この規格では、蓄電池システムの設計の段階から、長年使用して、その運用を終えるときの管理まで、安全のために何をどうすればよいかを定めています。

実はこの国際規格の原案を提案し、リーダーシップをとって国際規格を実現させたのは日本です。更にその中心となって、原案を作り、提案し、規格作りに取り組んだのは、NITEなのです。もっと言っちゃうと、この国際規格をもとにした日本国内の規格(JIS)も、2021年3月に作られていて、日本語で読めちゃうので、みなさんのより身近なところまで来ています。

もっと詳しく知りたいという方は、こちらの記事 ↓↓ をご覧ください。

>>> 日本が主導した定置用大型蓄電システムの安全性に関する国際規格が発行されました

>>> 定置用大型蓄電システムの安全性に関する日本産業規格(JIS C 4441)が発行されました


水害でも安全? そこで水没試験も始めた

もう一つ気になるのは、昨今増えている猛烈な集中豪雨や巨大な台風に伴う河川の氾濫などによる水害です。家屋が浸水するのと同様に、蓄電池システムが水に浸かる被害も急増しているそうです。電気と水の相性は悪そうですが、蓄電池システムは水に浸かっても大丈夫なのでしょうか。

“ 本当に大丈夫か!” を確かめるには、試してみる(=試験する)必要があります。

そこでNITEでは、2021年10月末、住宅用蓄電池システムのメーカーと共同で、日本で初めて、大型蓄電池システムの水没試験「NITE検証水没試験」を行いました。これは、洪水被害などにより蓄電池システムが水没してシステム内に水が入った場合、浸水がもとで発煙や発火を生じることなく、安全に機能停止するかどうかを調べる試験です。試験の内容は、研究機関や有識者の皆様との議論を経て決めたもので、床上浸水レベルを想定して行いました。

試験はこんな風↑↑に行われました


もっと再エネが普及するように、NITEがんばります!

さて、「再エネの普及のために蓄電池を水没させている」という意味がおわかりいただけたかと思います。

NITEでは、今後もいろいろな大型蓄電池システムの水没試験を行い、それらのデータの分析を行っていきます。このような試験を通じて集まってくるデータも、蓄電池システムの開発などに活用していただきたいと考えています。また、水没以外の試験も行って、安全性の高い製品の実用化や、蓄電池システムの普及が進むよう、もっともっと支援していきます。

日本は自然災害の多い国。災害時のために、蓄電池システムの利用を検討している…… という方もいらっしゃるでしょう。みんなが電気の作り方、使い方を考えることで、「日本は地球に優しい再エネがスゴイ」と自慢できるようになったらいいですよね。

ちなみにNITEは、普及のために欠かせないルール作りや安全性の試験などを行っています。上記で紹介したような大型蓄電池システムの試験ができる世界最大級の施設も持っています。その名は「NLAB」(エヌラブ、National LABoratory for advanced energy storage technologies)。かなりのスゴモノです。

「NLABおもしろそう!」と思った方は、こちら↓↓も見てみてください。

【nite】蓄電池評価センター(NLAB)の施設紹介 - YouTube

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