わかりそうでわからない「化学物質」。きちんと管理すればSDGsにも貢献できる
こんにちは。
独立行政法人製品評価技術基盤機構 NITE(ナイト) 広報企画室です。
(注:2022年4月1日より、NITEの「広報室」は「広報企画室」に名称変更しました。)
「化学物質」といったら、皆さんはどのようなイメージが浮かびますか?
危険なもの? 体に悪いもの? それとも、役に立つもの?
化学物質って、わかっていそうで意外とわからないもの…… と思った方もおられるのではないでしょうか。今回は、化学物質とは何なのか、どんな風に管理されているのか、またSDGsとどんな関係があるのか紹介します。
< 1.化学物質とは何ですか? -人工的に作ったものだけが化学物質なのではありません- | 化学物質管理 | 製品評価技術基盤機構(nite.go.jp) >
私たちは化学物質と暮らしている
化学物質とは、科学的には元素や元素が結びついたもののこと。自然のものも、人工的に作られたものも、すべて化学物質です。私たちの暮らしがこんなに豊かで便利で、しかもカラフルで、バラエティに富んでいる理由の1つは、化学物質のおかげと言ってもいいのかもしれません。
でも「危険」「体に悪い」というのも、間違いではありません。化学物質は扱い方や量を間違うと、危険な物にもなる可能性(リスク)があるからです。たとえば、「塩」はナトリウムと塩素からできている化学物質です。日々の食生活には欠かせないものですし、熱中症を予防するために水分と塩分の補給が大事なことも、皆さんはよくご存じでしょう。一方で、塩分を取り過ぎると血圧が高くなる…… という面もありますよね。
役に立ったり、害になったり
実際、私たちの体にはさまざまな経路で化学物質が入ってきています。
特に害をもたらす可能性の高い化学物質については、さらされて(暴露)も悪い影響が出ない量(無毒性量)が実験によって調べられています。体格や年齢、性別などによっても影響の強さは異なるため、どんな人でも安全なように、実験で得られた数値を10分の1、100分の1にして、人の無毒性量としています。
程度の差はあるものの、すべての化学物質は使い方によって、役に立ったり、害になったりするもの。化学物質の「役に立つ性質」を使って、便利に豊かに暮らすには、化学物質の使用や管理が正しく行わなければならないのです。
化学物質との上手な付き合い方や、化粧品、家庭用洗剤などの家庭用製品に含まれる化学物質について、わかりやすくまとめたパンフレットを用意しています。ぜひ活用してください。
< よくわかる化学物質管理 | 化学物質管理 | 製品評価技術基盤機構(nite.go.jp) >
< 化学物質と上手に付き合うために | 製品評価技術基盤機構(nite.go.jp) >
< 身の回りの製品に含まれる化学物質シリーズ | 化学物質管理 | 製品評価技術基盤機構(nite.go.jp) >
化学物質の排出量は私たちも見られる
たとえば、何かを作るのにとても役立つ化学物質があるとします。それをたくさん吸い込むと体に害があることもわかっています。もし、そんなものが空気中に大量にあったら大変ですよね。でもその化学物質のおかげで、生活に便利な何かができているのも事実です。
そこで、そのような化学物質を扱う事業者は、毎年、国に排出量を報告することが法律で定められており、国は報告された情報を公開しています。事業者が報告する排出量だけでなく 、報告の対象にならない規模の小さな事業者や、農薬、塗料、洗剤、自動車の排ガスなど、何らかの製品を使用することで排出されている化学物質の量の推計値も、公表されています。この制度を「PRTR(ピー・アール・ティー・アール:Pollutant Release and Transfer Register)制度」といいます。
NITEでは、市区町村、都道府県ごとの排出量、その排出量からシミュレーションモデルを使って推計した大気中の化学物質の濃度を、地図上で確認できるしくみ「PRTRマップ」を運用しています。日々、化学物質の排出削減に取り組んでいる事業者のがんばりの結果を、見ることができるのです。
「そうなの? 私も見てみたい!」と思った方は、こちら(prtrmap.nite.go.jp) からPRTRマップを見てみてください。
※濃度や排出量は人や生態系に影響を及ぼしていることを示すものではありません。
化学物質の管理はSDGsにも貢献します
さて、最近ニュースなどで「SDGs」という言葉をよく耳にするようになりました。SDGs(Sustainable Development Goals:持続可能な開発目標)は、持続可能な世界を実現するための国際目標で、17のゴール・169のターゲットから構成されています。
化学物質の管理は、SDGsとも深い関係にあります。どのような関係なのか、紹介しましょう。
ゴール6は「すべての人々に水と衛生へのアクセスを確保する。」です。そのターゲット3は以下のようなものです。
次にゴール12。これは「持続可能な生産消費形態を確保する。」で、そのターゲット4は以下のような内容です。
つまり事業者は、SDGsの観点からも、悪い影響が出る可能性がある化学物質を適切に管理することが求められているのです。
これは、事業者だけのことではありません。一般消費者も化学物質を含んだ製品を使用することで排出しています。環境に出しすぎないように、私たちも製品の説明書やラベルをよく読んで、正しく取り扱う必要があります。
SDGsの目標達成のために便利なツール「GHS」
「どんな化学物質の扱いに注意すればいいの?」と思った方に、ぜひ知っていただきたいのが「GHS」です。これは、「何をしてはいけないのか」「どのように危ないのか」を示す、世界共通の絵表示です。
GHSは、化学物質の管理が関係するSDGsの目標を達成・実現するために、とても便利なツールでもあります。
例えば、上のGHS絵表示は、環境に放出すると水生環境(水生生物およびその生態系)に悪影響を及ぼすこと(水生環境有害性)を示しています。絵表示の意味を知っていれば、事業者も消費者も環境に放出しないよう注意することができ、ご紹介したようなSDGsのターゲットの達成につながります。だから、GHSはSDGs達成のために、とても便利なツールなのです。
GHSを遊びながら学べるパズルもあります。パズルやGHSの詳細については、こちら を読んでみてください。
私たち一人一人の気づきや心がけも、「ちりも積もれば山」となります。化学物質について正しく理解し、上手に付き合いながら、SDGsにも貢献できるようにしていきたいものです。
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